レースレポート
スーパー耐久シリーズ 2022 第1戦 鈴鹿サーキット 3号車
[予選/3月19日(土)] 3号車
Aドライバー/小河 諒……… PM 2:20〜 2:35 ドライ
Bドライバー/菅波冬悟……… AM 3:20〜 3:35 ドライ/ウエット
Cドライバー/川端伸太朗…… AM 3:55〜 4:15 ドライ
今シーズンから冠スポンサーにENEOSがついたスーパー耐久だが、当チームにとっても新たな一歩を踏み出すシーズンとなりそうだ。
2013シーズン、それまで参戦していたST-2クラスからST-X(GT3)クラスにスイッチ。2015シーズンにはBMW Z4でチャンピオン獲得、2019シーズンからはMercedes-AMG GT4でST-Zクラスに挑み、チーム力で3連覇を成し遂げることに成功した。
当然、「4連覇」という新たな目標を目指すところではあるが、エンドレスというブレーキメーカーがレースでやるべきことは、勝つことだけではなく、安心して踏めるブレーキシステムの開発もしなくてはいけない。
しかし改造可能範囲の少ないGT4車両を用いるST-Zクラスでは、ブレーキシステムをはじめ多くのパーツ変更が認められていない。そこで、ST-Zを戦ったAMG GT4へ自社パーツを装着し、別のクラスにて参戦することを思案。
2022シーズンはSTO事務局と協議のもとST-1クラスでエントリーし公開テストを済ませていたが・・・・・。3月末、STO事務局と緊急ミーティングが開かれST-1でエントリーが出来ないこと、ST-Qクラスでクラス変更に伴いマシンにも手を加えた。ベース車両は3連覇を果たしたGT4マシンそのものだが、オートサロンでお披露目した新型ブレーキキャリパーをはじめとするENDLESSのブレーキシステム、そしてZEAL事業部が開発を進めるサスペンションキットを取り付け。加えてBoP(性能調整)やポイント獲得によって課せられるウエイトハンデを降ろして軽量化。新たな戦いに向け改良が進められた。
ドライバー陣は、昨シーズンAMGで3連覇に貢献した小河 諒/菅波 冬悟の2人に加え、昨シーズンにスーパー耐久ではMcLaren 720S GT3(ST-Xクラス)で、SUPER GTではHitotsuyama Audi R8(GT300クラス)でステアリングを握った川端 伸太朗が加入。新たな布陣で開幕戦の鈴鹿ラウンドに挑んだ。
公式予選当日。総合でST-Xクラスに次ぐ7番手となった。タイム上では、ST-Zクラスでポールポジションの5ZIGEN AMGを約2.8秒、ST-1クラスでポールポジションのD’station Vantage GT8Rを約1.5秒上回る結果となった。もちろん純粋な比較は出来ないものの、マシン改良による速さを証明する結果となった。
[決勝/3月20日(日)] 3号車 総合5位
スタート 11時44分40秒 チェッカー 16時46分47秒
路面コンディション ドライ
快晴となった決勝当日。風も弱く、温かさを感じる1日となった。
決勝レースでは、ライバル不在のなかレースペースで走行することが求められる。他のレースで同様のシチュエーションで走行することはあまり無いため、各ドライバーにはこの新たな環境への適応が必須課題となる。また、同じクラス・同じ速さのマシンがいないため、昨シーズンまでのようなサイドバイサイド、テールトゥノーズのバトルを他クラスのマシンと、というわけにはいかない。他車とのラインの譲り方・譲られ方など、各ドライバーはこのレースでの学習が求められる。
もうひとつ、今シーズンは大きなポイントがある。ピットストップのタイミングだ。今シーズンからフル参戦する13号車ENDLESS GRヤリスは、3号車の隣にピットを構える。レースにおいては、ピットが隣のチームと事前に「ルーティンのピットストップはこのタイミングでします」という打ち合わせをしておくのが一般的。というのも、もしピットが隣同士の車両が同時にピットインした場合、車両が止まるスペースが広く取りにくい。すると、ピットイン/アウト時にお互いの車両の邪魔をしてしまい、タイムロスをしてしまう。2020シーズン、AMGと86で参戦していた際は、AMGのピットストップのタイミングが80分ごとだった一方、ハチロクは120分近く走ることができた。そのためピットストップのタイミングをずらすことは比較的簡単だった。しかしヤリスが走るST-2クラスのマシンは、レギュレーションで燃料タンクは85ℓと定められており、走行時間にすると約70分が限界。つまりAMGとはピットストップのタイミングが近い。「セーフティカー、フルコースイエローが導入されたときはどうするか」など予め様々なケースについて相談しておかなければ、ピットイン/アウト時の交錯やそれに伴うタイムロス、そして事故にもつながりかねない。この問題に対して、チームとしての力が求められる。
決勝レースは、小河→菅波→川端とつないで開幕戦を戦った。各ドライバーからは新品タイヤ/燃料満タンの状態から、タイヤが摩耗し燃料も減った状態への走りの変化など、様々な報告があった。同じサーキットでも路面温度や路面状況で車の挙動は大きく変わってくるため、一つ一つのフィードバックが貴重なデータとなる。メカニック側も確実なピットストップで、コースへマシンを送り出すことに成功した。
3号車AMGは安定した走りを見せ、ST-Xクラス勢に次ぐ総合5番手でチェッカーを受けることができた。予選に引き続きST-1クラスとST-Zクラスの車両を上回ることができたことは、マシンの速さと信頼性の証明となった。一方でパーツ交換に伴うマシンの変化に対して、セッティング面ではまだまだこれからである。鈴鹿で得られたドライバーからのフィードバックやデータをもとに、改良を進めていく。
次戦は6月に開催される富士24時間レース。ST-Zクラスでは3連覇を果たしているレースだが、昨年はマシントラブルも発生。今年は開発&テストの面が重視されることから、可能な限り走行距離、走行時間を確保していきたい。速さだけでなく信頼性の面でも改良を進めるべく、さらなる開発を進めていく。