レースレポート
スーパー耐久シリーズ 2022 第1戦 鈴鹿サーキット 13号車
[予選/3月19日(土)] 13号車
Aドライバー/伊東 黎明…… 3位 PM 2:20〜 2:35 ドライ
Bドライバー/石坂 瑞基…… 2位 AM 3:20〜 3:35 ドライ/ウエット
Cドライバー/花里 祐弥…… 5位 AM 3:55〜 4:15 ドライ

2022シーズン、開幕の舞台は鈴鹿サーキット。ST-Zクラスで3連覇を飾った3号車のAMGは、ST-Qクラスにスイッチ。自社パーツであるブレーキやサスペンションの開発を主にして参戦となった。

さらに今シーズンは、2021シーズンの最終戦・岡山ラウンドでデビューした13号車GRヤリスがST-2クラスへフル参戦。同クラスへのフル参戦は、2012シーズンのエボⅩ以来となる。また、3号車のクラス変更に伴い、チャンピオンシップを争う車両は13号車のみとなった。13号車には勝利を目指して戦うことが求められる。

13号車GRヤリスのステアリングを握る3名のドライバーは伊東 黎明/石坂 瑞基/花里 祐弥。伊東はカートからフォーミュラにステップアップした21歳。86のワンメイクレースには参戦しているが、スーパー耐久のような混走レースに加え、4WDマシンの経験はない。今シーズンの参戦を通じて成長が期待できる若手ドライバーだ。石坂はカートからフォーミュラにステップアップした後、昨シーズンまでの3年間、ST-2クラスのWRX STIのステアリングを握っていたドライバー。スーパー耐久での4WDマシンの経験は豊富だ。花里は昨シーズンの最終戦でヤリスのステアリングを握り、好成績を残すことに成功。これまでは教えてもらう立場で参戦していた花里は、今シーズンから教える立場に立つことになる。

また、20年以上の付き合いがある渡海自動車(兵庫県赤穂市)の渡海社長が13号車の監督として、全戦で指揮をとってもらう。



決勝のスターティンググリッドを決める予選は、伊東/石坂の二人が担当。Aドライバー登録の伊東は、トップのエボⅩから0.345秒落ちのクラス3番手。予選後「ニュータイヤの美味しいところが使えていなかった。コーナーでの突っ込みすぎや、鈴鹿のライン取りも……」と、本人からは反省の言葉が多かった。Bドライバーとしてアタックした石坂は、トップから0.964秒落ちの2番手。昨年までステアリングを握っていたWRX STIは、バランスよく前後のタイヤを暖めることができていた、とのコメントがあった。一方ヤリスはその面で劣っており、石坂もリアが暖まる前にアタックしてしまいハーフスピン。再度、アタックしたがタイムを伸ばすことはできなかった。渡海監督も「アタックできるのは、鈴鹿の場合1LAPだけ。その後はミスなく走れてもタイムアップするのは難しい。ただ、今はヤリスというマシンの特性を早く体に叩きこんでほしいし、経験を積んでほしいから、アタックも認めた」と話す。Cドライバーの花里は、決勝セッティングの確認などを行い明日に備えた。

最終的にクラス2番手という予選結果となった。エボⅩやWRX STIには多くのデータがあり、チームも勝つための戦術をもっている。それに比べヤリスでのデータは圧倒的に不足していることが現状である。決勝レースはチームが持っている力を出し切るしかない。絶対に勝つ。この気持ちで決勝に備えた。
[決勝/3月20日(日)] 13号車 ST-2クラス2位
スタート 11時44分40秒    チェッカー 16時46分47秒
路面コンディション ドライ


春というにはやや肌寒い1日だったが、風もなく雲もほとんどない好天の下、5時間先のチェッカーを目指して、11時40分過ぎ、ローリングが始まった。

当チームのスタートドライバーは石坂。無理はしない。周りのマシンを見ながら、自分たちのペースで走行。序盤は5番手にまでポジションを落とすが、トップで逃げるエボⅩから大きく引き離されずに済んだ。7LAP目にはFCY(フルコースイエロー)が導入。20ラップ過ぎにはトップグループを形成していたエボⅩの1台がストップ。WRX STIは早めに1回目のピットストップを行う。この先の流れにもよるが、これでインプレッサは4回のピットストップが確実になる。その直後に2回目のFCY。このタイミングで13号車は2番手にまで浮上。225号車のヤリスとトップ争いを繰り広げることになる。36LAP過ぎ、激しいトップ争いを繰り広げていた225号車と同時にピットストップ。給油、タイヤ交換などの作業を終わらせ、伊東の乗ったヤリスを225号車の前でコースに送り出す。これによりトップのWRX STIから約8秒遅れ、3番手の225号車が約4秒後方という2番手の位置となった。

45LAP過ぎ、ここで公式配信のモニターが当チームのヤリスを追いかけ出す。マシンの左リア、バンパーが大きく膨らんでいる。コース上のタイヤの削れカスがバンパーにダメージを与えてしまったようだ。昨シーズンの岡山でのレースでも発生していたため、チーム側も対策を施していたが再発となってしまった。バンパーが外れかけているわけではないし、路面をこすっているわけでもないのでオレンジボールがすぐには振られることはないとは思うが……。こればかりは祈るしかない。補修のため早めに2回目のピットストップを行うという策もあるが、このタイミングでピットストップしてしまうと、3回のピットストップでは走り切れないことになってしまう。少しペースを落として、様子を見ることとなった。

50LAP過ぎ、トップを走っていたWRX STIがスローダウン。そして54LAP目、225号をかわし待望のトップに躍り出る。69LAP過ぎ、2回目のピットストップ。給油、タイヤ交換そしてリアのバンパーを応急処置。2~3秒のロスは発生したものの、ポジションを下げることなく送り出すことに成功した。代わった花里は安定した走りで、80LAP過ぎには2番手の225号車との差を13秒近くにまで広げた。89LAP過ぎ、先に3回目のピットに入ったのは225号車。13号車は92LAP過ぎまでタイミングを引っぱりピットストップ。給油など一連の作業を終わらせ、石坂に代わったヤリスをトップの位置でコースに送り出す。

その直後の6コーナー。まさかの事態が起きる。ST-1クラスのマシンと13号車のヤリスがコース上でストップしているシーンがモニターに映し出された。原因は逆バンクでの接触。最終的にはレーシングアクシデントとの判定が下されたため、ペナルティを課されることは無かった。しかしレースに復帰するも、トップに躍り出た225号車とのタイム差は55秒以上に広がっていた。アライメントは狂っているようだが、プッシュできないほどではないため、石坂はチェッカーまで攻め続けた。チェッカーまで約30分、ラップ2分22秒台という速さで追撃するも、さすがに43秒の差を詰め寄ることはできず、2番手でのチェッカー。十分に優勝を狙えたレースだっただけに、悔しさの残るレースとなってしまったが、新体制のチームには大きな経験を積むことができたレースでもあった。

次戦は富士24時間レース。成長過程にある各ドライバーはこの経験をこの24時間で生かしたい。また、マシンも再発したトラブルへの対策など、さらなる改良が必要だ。未知の領域であるヤリスの耐久性という点もあるものの、24時間の経験をしているチームのメンバーを中心に優勝という最高の結果を目指す。