スーパー耐久シリーズ 2021 第3戦レポート
波乱の展開となった24時間レースでENDLESS勢が躍進!
「ENDLESS AMG GT4」がST-Zクラスで大会3連覇を達成
概要/Outline
2021年のスーパー耐久シリーズ第3戦「富士スーパーテック24時間レース」が5月20日~23日、静岡県の富士スピードウェイを舞台に開催。今年で4度目の開催となる過酷な24時間レースで、ENDLESS勢が素晴らしい走りを披露していた。

なかでも、抜群のポテンシャルを見せたのが、ENDLESSのワークスチーム、ENDLESS SPORTSの3号車「ENDLESS AMG GT4」で、総合リザルトで3位につけたほか、ST-Zクラスで大会3連覇を果たすなど圧倒的なパフォーマンスを披露した。

さらにST-1クラスではKsフロンティアKTMカーズの2号車「シンティアム アップルKTM」が総合2位につける快走でクラス優勝を獲得したほか、ST-3クラスではHELM MOTORSPORTSの62号車「HELM MOTORSPORTS RC350」、ST-4クラスでは浅野レーシングサービスの18号車「Weds Sport 86」、ST-TCRクラスではRacer Mooncraft Racingの97号車「Racer Hondaカーズ桶川CIVIV」がそれぞれクラス優勝を獲得するなど、ENDLESSのサポートチームが躍進。そのほか、ST-Xクラス、ST-2クラス、ST-5クラスでもENDLESSユーザーが表彰台を獲得するなど過酷な24時間レースで抜群のパフォーマンスを披露していた。
富士スーパーテック24時間レースの特徴/About Fuji SUPER TEC24 Hours Race
2008年の十勝24時間レースを最後に開催が見合わせされていた国内24時間レースが2018年に復活。富士スピードウェイを舞台にした「富士スーパーテック24時間レース」として国内では10年ぶり、富士スピードウェイとしては50年ぶりに24時間レースが開催された。

同イベントはスーパー耐久の一戦に組み込まれ、通常ラウンドよりも多くのポイントが配点されることから、数多くのチームがレギュラードライバーのほか、国内外のトップレースで活躍するプラチナドライバーやエキスパートドライバーを起用。マシンに関してもナイトセッションに合わせて補助ランプを採用するほか、長距離レースに備えてブレーキアイテムの強化や冷却システムの向上を図るなどソフト、ハードともに特別な一戦となっている。

開催4年目となる2021年は新型コロナウイルスの影響でパドックエリアへのアクセスが制限されたものの、それでも観客動員が行われ、コースサイドでのキャンプおよびバーベキューも健在だった。まさにレースファンにとって富士24時間はスペシャルなイベントで、ル・マン24時間レースやニュルブルクリンク24時間レースのように年に一度の祭典として定着している。
レースレポート/Race Report
国内24時間レースとして2018年に復活を果たした「富士スーパーテック24時間レース」が5月20日~23日、国内屈指のハイスピードコースである富士スピードウェイを舞台に開催。今年で4回目の開催となる同大会は新型コロナウィルスの影響により、海外から遠征するチームが参戦を見合わせたものの、それでも9クラスに計52台が集結した。

今大会には「STOが参加を認めたメーカー開発車両または各クラスに該当しない車両」を対象とするST-Qクラスに、ROOKIE Racingが世界初の水素エンジン搭載モデルとして32号車「ORC ROOKIE Corolla H2 Concept」を投入したことで国内外の注目を集めるなか、各クラスでENDLESSのサポートチームが活躍。なかでも目覚ましい飛躍を遂げたのが、スーパー耐久シリーズで積極的な活動を展開するENDLESSのワークスチーム、ENDLESS SPORTSで、メルセデスAMG GT4の3号車「ENDLESS AMG GT4」がST-Zクラスで猛威を発揮していた。

21日の予選は激しい雨に祟られたことで中止となり、曇天のなかで開催された22日の決勝はポイントランキングの順位でスタートした。15時のスタート直後はミスが重なり、3号車のENDLESS AMG GT4は6番手までポジションを落とすものの、内田優大/山内英輝/菅波冬悟/小河諒がコンスタントな走りを披露し、レース中盤でトップに浮上した。レース終盤にはハブセンター部のトラブルにより、これまで築いてきたマージンを失ったものの、3号車のENDLESS AMG GT4はポジションをキープしたまま翌23日の15時に総合3位でチェッカー。2021年よりスーパー耐久はハンコックのワンメイクタイヤとなったことから、タイヤのマネジメントが手探りとなるなか、ENDLESS AMG GT4は素晴らしい対応能力を見せ、ST-Zクラスで3連覇を達成した。

また、ST-2~ST-5以外の車両を対象にしたST-1クラスでもENDLESSユーザーが活躍しており、KsフロンティアKTMカーズが投入したKTM GT-X、2号車の「シンティアム アップルKTM」が素晴らしい走りを披露していた。ドライバーのラインナップは飯田太陽/加藤寛規/小林崇志/吉本大輝/高橋一穂で、シンティアム アップルKTMはレース序盤でトップに浮上すると、その後はST-Xクラスに迫る勢いで後続とのリードを拡大。小さなトラブルはあったものの、最後まで後続を寄せ付けず、シンティアム アップルKTMは総合2位でチェッカーを受けるほか、ST-1クラスを制し、開幕戦のもてぎ大会に続いて今季2勝目を獲得した。

2001cc~3500ccまでの後輪駆動を対象にしたST-3クラスでもENDLESSユーザーの1台、HELM MOTORSPORTSの62号車として参戦したレクサスRC350の「HELM MOTORSPORTS RC 350」が素晴らしい走りを披露していた。同チームのドライバーは平木湧也/平木玲次/高橋知己/松澤亮佑で平均年齢22歳という若手中心のラインナップだったが、コンスタントな走りを披露。ライバルチームが次々に脱落するなか、62号車のHELM MOTORSPORTS RC 350は目立ったトラブルに祟られることなく、チームおよび各ドライバーともに24時間レースでの初優勝を獲得した。そのほか、OKABE JIDOSHA motorsportのニッサン・フェアレディZ34、長島正明/小松一臣/甲野将哉/植田正幸/田畑勇/勝亦勇雅らがステアリングを握る15号車「岡部自動車レカロZルーニースポーツ」も3位入賞。この結果、ENDLESS勢がST-3クラスで1-3フィニッシュを達成した。 1501cc~2000ccまでの車両を対象にしたST-4クラスでもENDLESSユーザーが躍進している。同クラスは実質的にトヨタ86のワンメイク状態となるなか、浅野レーシングサービスの18号車「Weds Sport 86」が安定した走りでラップを重ねた。ライバル勢がマシントラブルや接触で上位争いから脱落するなか、浅野武夫/藤原大暉/芝叔和/松井宏太/普勝峻/中島佑弥の18号車がトップ争いを支配。終盤でエキゾースト系のトラブルが発生したものの、完璧な対応を見せたWeds Sport 86がST-4クラスを制した。そのほか、レース序盤でエンジントラブルに祟られたC.S.I Racingの310号車「GR Garage水戸インターGR86」もENDLESSユーザーで、わずか1時間半でエンジン交換を行なった上で猛追を披露。坪井翔/細川慎弥/堀尾風允/久保凜太郎/鈴木宏和らのドライビングにより310号車が3位入賞を果たしたことで、ST-4クラスでもENDLESS勢が1-3フィニッシュを達成した。

そのほか、TCR車両を対象にしたST-TCRクラスでもRacer Mooncraft Racingが97号車として投入したホンダ・シビック・タイプRの「Racer Honda カーズ桶川CIVIV」もENDLESSユーザーとして活躍。アクセルやドライブシャフトのトラブルで一時はトップ争いから脱落したものの、ライバルチームにミッショントラブルが発生したことから、遠藤光博/中野信治/小出峻/澤龍之介/原田健太らがドライブしたRacer Honda カーズ桶川CIVIVが逆転でST-TCRクラスを制した。

以上、クラス優勝を果たしたユーザーを中心に紹介してきたが、GT3を対象にしたST-XクラスではD’station Racingのアストンマーティン・ヴァンテージAMR GT3、777号車の「D’station Vantage GT3」が2位、Floral Racing with ABSSAのマクラーレン720S GT3、290号車「Floral UEMATSU FG 720S GT3が3位に入賞したほか、1500cc以下の車両を対象にしたST-5クラスでも村上モータースのマツダ・ロードスター、88号車の「村上モータースMAZDAロードスター」が3位入賞を果たすなど表彰台を獲得した。

さらに2001cc~3500ccまでの4輪駆動車および前輪駆動車を対象にしたST-2クラスでもTOWAINTEC RacingのスバルWRX STI、59号車「DAMD MOTUL ED WRX STI」が3位で表彰台を獲得。ちなみに、ST-2クラスには計3台のトヨタGRヤリスが参戦していたが、全車ともにENDLESSのブレーキキッドを採用したことも2021年大会のトピックスといえる。

2020年の大会が雨に祟られたほか、2021年のスーパー耐久シリーズ開幕戦のもてぎ大会も雨に祟られたことから、ブレーキに対する負荷がわからないまま、各チームは2021年の大会に挑むこととなったが、ENDLESSユーザーが5クラス制覇を達成したほか、いくつかのチームはブレーキ無交換で24時間レースを走破している。

今大会もFCYが16回、SCが3回に渡って導入されるなど、例年以上のサバイバル戦が展開されたものの、ENDLESS勢は各クラスで抜群のパフォーマンスを披露することで、ブレーキアイテムのクオリティを証明。それだけに今後も2021年のスーパー耐久シリーズではENDLESS勢がトップ争い、さらにタイトル争いの主導権を握ることだろう。