スーパー耐久シリーズ 2021 第3戦レポート
3号車 ENDLESS AMG GT4が富士24時間レースを3連覇!
概要/Outline
開催日:2021.5.21〜5.23
サーキット:富士スピードウェイ
チーム体制:エンドレススポーツ
Aドライバー:内田優大
Bドライバー:山内英輝
Cドライバー:菅波冬悟
Dドライバー:小河 諒

予選結果:雨天中止
決勝結果:優勝
シリーズランキング:ST-Z CLASS 1位
[予選/5月21日(金)]3号車 

いまだ衰える気配を見せていない新型コロナウイルス感染症。首都圏を始め、日本各地で緊急事態宣言が発令される中での耐久レース。延期、中止になってもおかしくない状況だったが、富士スピードウェイを始め、各チーム、関係者の努力により開催することができた。

今の時代、サーキットに足を運ばなくてもネットなどでレース状況も結果もすぐに入手できる。となれば、無観客レースでもいいのかもしれない。 しかし、当チームだけでなく多くのレース関係者は、レーシングカーならではのEXノート、タイヤ交換、ピットワークなどをサーキットまで足を運んでもらい、間近で見てもらいたいと思っている。予選は豪雨により中止になったが、第3戦の富士スピードウェイ(24h×1レース)は無事決勝日を迎えた。

スーパー耐久の原点は、1990年に始まったN1耐久にまで遡る。サーキットの改修により富士で開催されなかったシーズンもあったが、過去30回の開催中、約半分となる14回が梅雨時の5~6月に開催。当時からシリーズに参戦している当チームにしてみると、富士の耐久イコール雨という印象があり、今回の予選中止はそんなに驚くものではなかった。

決勝のスターティング・グリッドは、雨で予選が中止になった昨シーズンのSUGOラウンド同様、第2戦終了時のランキングにより決定された。当チームのランキングは7番手だったが、今回の富士ラウンドにエントリーしていないチームもあり、ST-Zクラスに参戦した9チーム中4番手。さらにエンジン載せ替えにより108号が最後尾に降格。当チームはクラス3番手からのスタートとなった。


[決勝/5月22日(土)〜23日(日)]3号車 優勝
スタート  5月22日 15時00分45秒
チェッカー 5月23日 15時03分35秒979
路面コンディション ドライ
FCY導入 計16回
1回目 5月22日 15時54分20秒〜15時55分44秒
2回目 5月22日 16時11分35秒〜16時13分15秒
3回目 5月22日 17時18分44秒〜17時25分16秒
4回目 5月22日 19時59分59秒〜20時02分52秒
5回目 5月22日 21時35分15秒〜21時37分30秒
6回目 5月22日 22時34分26秒〜22時42分19秒(SC導入に移行)
7回目 5月22日 23時26分24秒〜23時29分20秒
8回目 5月23日  1時22分28秒〜 1時25分50秒
9回目 5月23日  2時31分40秒〜 2時34分27秒
10回目 5月23日  2時46分40秒〜 2時48分13秒
11回目 5月23日  4時16分19秒〜 4時19分50秒
12回目 5月23日  5時50分48秒〜 5時56分32秒
13回目 5月23日  9時05分25秒〜 9時09分24秒
14回目 5月23日  9時45分19秒〜 9時48分12秒
15回目 5月23日 10時00分53秒〜10時04分27秒
16回目 5月23日 11時39分01秒〜11時42分27秒

SC導入 計3回
1回目 5月22日 22時42分〜23時01分
2回目 5月23日  4時44分〜 5時17分
3回目 5月23日  8時44分〜 9時00分


予報通り、夜半には雨も上がり、決勝のスタートが切られる土曜日にはドライ路面に戻り、最高のレース日和となった。

木曜日の公開練習で速さを見せていたのが20号車BMW、885号車スープラ、47号車アストン。
4月の練習走行でかなりセットが決まってきた当チームのAMGだが、速さという点で勝負するにはまだまだ厳しい状況が続いている。このハンディはピット作業やレースの流れ、さらにはミスを最小限に抑えることで戦っていくしかない。タイヤがピレリからハンコックに変更されているので、昨シーズンの全てのデータを参考にはできないが、1時間30分の走行で15回のピットストップを基本にレースを消化していく。
それ以上に当チームの最大の武器は、Aドライバーの内田優大、Bドライバーの山内英輝のコンビは、今シーズンで3年目。C&Dドライバーの菅波冬悟、小河諒も当チームのST-4クラスのハチロクでステアリングを握り、チームの雰囲気はわかっている。各ドライバーの信頼関係ができているのは強い。

まず、レース序盤は小さいミスが続いた。タイヤ交換、走路外走行、走行マナーなどで黒白旗が振られたりしたが、メカニックもドライバーも、このミスを取り返す頑張りを見せた。スタート直後に、6番手にまでポジションを下げるシーンもあったが、自分たちのペースで走っていると、すぐに3番手、2番手と上がっていく。レースの流れが大きく変わったのは、スタートから8時間が経過しようとしているあたりからだった。当初、1予定していたピットストップのタイミングを1時間半間隔でより伸ばすことができていた。というのも、昨シーズン、6回だったFCYが8時間経過した時点で6回(最終的に16回)も導入されていた。燃費がよくなれば、ピットストップのタイミングを遅らせる。最終的にピットストップの回数が減ることにもなる。
逆にSCの回数は、昨シーズン、10回もあったのに、今回は3回。ちなみにSC中はピットストップできるが、FCY中はピットストップ禁止だ。

このFCYやSC中のタイミングで、6時間過ぎにトップ集団から引き離されるシーンもあったが、1回目のSC導入時と当チームのピットストップのタイミングが合致。これでトップに躍り出ることができた。その後もSCが少ないため、当チームは1時間半走行を徹底するだけでなく、FCYによる燃費向上分だけタイミングを遅らせていくことができた。ドライバーも安定したラップタイムを刻んでいく。折り返し点となる12時間経過時には、2番手との差を1ラップ以上に広げていた。

13時間が経過しようかという4時前には、最終コーナー奥に富士山が見えだす。当チームのAMGと2番手につけるBMWとの差は2ラップ。各ピット作業もほぼ90秒以内で終わらせ、レギュレーションで決められているメインテナンスピットストップ(10分ストップ)では、ブレーキパッドの交換、各部のチェックを問題なく終わらせ、10分17秒でコースに送り出すことに成功。
後方から追い上げてくるマシンがペナルティにより後退。さらに18時間が経過しようかという9時前にこの日、3回目のSC導入。このチャンスもタイミングよくピットストップができ、2番手との差を4ラップ以上にまで広がることができた。

しかし、勝利の女神はそんなに優しくはなかった。13回目のピットストップ時、ハブセンター部のトラブルから右後方のタイヤがうまく交換できず、5分以上のストップを強いられる。これで一気にリードを吐き出すことになってしまった。11時40分過ぎ、14回目のピット。さらにセンター部が悪化していて、40秒近くのリードをロスしてしまう。チェッカーまで3時間20分。ピット内が一気に慌ただしくなる。
燃費的には残り2回のピットが必要だが、Aドライバーの内田がレギュレーションで決められている15%以上の走行にまだ達していない。
ピットインの際にタイヤ交換を試みるも、タイヤが外れない。無理に外したとしてもセットできない可能性が高い。残り時間は3時間以上あるなか、このままのタイヤで走行するとなればハンコックタイヤがどこまで持ちこたえてくれるか。スーパー耐久の培った経験で思考を巡らせケースを想定する。
アライメントも狂ってきている。タイムアップも厳しい。ラップタイムの遅いST-5クラスのマシンをパスするには、どうしてもラインを外さないといけない。路面にはタイヤかすがあり、踏んでしまえば、激しいジャダーが発生する。

ドライバー、メカニック、エンジニアにより、ギリギリまで協議して出した策は、15回目のピットストップで内田にスイッチ。タイヤは3本のみの交換で送り出すことにし、最後の走行はマシンの状況が分かっている菅波がステアリングを握る。タイヤはフロント2本のみの交換と戦略を立てる。まず、内田が必死の走りでラップを重ねていく。攻めればタイヤへの負担が増す。抑えて走れば、2番手のBMWが迫ってくる。前戦のSUGOラウンド同様、厳しい状況下での走りを強いられる。

残り1時間20分のところで菅波にスイッチ。リードは2位BMWに90秒強。机上の計算ではBMWの2秒落ちでも逃げられる計算なのだが……。いつバーストするかわからない。どのチームも必死だ。
最終的に40秒を切るまで詰められたが、24時間経過。サインガードで待ち受ける内田、山内、小河。そして、メカニックの前をクラストップで駆け抜け、長い本当に長い戦いに決着をつけた。

これで当チームのAMGは富士24時間、3連覇を達成。今シーズンのランキングでもトップに躍り出ることができた。一時は楽勝とも思えるほどの展開だったのが、どん底に突き落とされた終盤。昨シーズン、学んだチームの結束力で今シーズンも勝利をつかみ取ることができた。残り3戦もエンドレスらしい粘りのある走りでシリーズ3連覇を目指して突き進みます。

スタート 5月22日(土) 15時00分45秒(残り:24時間)
スタートポジション 3位 ドライバー 山内英輝

15:54〜15:55 FCY導入
16:11〜16:13 FCY導入
 
16:31 (残り: 22時間29分)  48LAP 3位
   PIT STOP 01 回目
  ドライバー交代 山内→内田優大 タイヤ(ドライ)交換/給油

17:18〜17:25 FCY導入 

18:11 (残り: 20時間49分) 98LAP 2位
  PIT STOP 02 回目
ドライバー交代 内田→菅波冬悟 タイヤ(ドライ)交換/給油

19:47 (残り:19時間13分) 149LAP 1位 
PIT STOP 03 回目
ドライバー交代 菅波→小河 諒 タイヤ(ドライ)交換/給油

19:59〜20:02  FCY導入

21:27 (残り:17時間33分) 200LAP 1位 
PIT STOP 04 回目
ドライバー交代 小河→山内 タイヤ(ドライ)交換/給油

21:35〜21:37  FCY導入
22:34〜22:42  FCY導入(SC導入に移行)

22:48 (残り: 16時間12分) 238LAP 1位
  PIT STOP 05 回目(SC導入中)
ドライバー交代 山内→菅波 タイヤ(ドライ)交換/給油

23:26〜23:29  FCY導入

5月23日(日)00:32 (残り:14時間28分)  290LAP 1位 
PIT STOP 06回目
ドライバー交代 菅波→小河 タイヤ(ドライ)交換/給油

01:22〜01:25  FCY導入
 
02:00 (残り: 13時間00分)  340LAP 1位
  PIT STOP 07 回目
ドライバー交代 小河→山内 タイヤ(ドライ)交換/給油

02:31〜02:34  FCY導入
02:46〜02:48  FCY導入

03:43 (残り: 11時間17分)  389LAP 1位
  PIT STOP 08 回目
ドライバー交代 山内→菅波 タイヤ(ドライ)交換/給油

04:16~04:19  FCY導入

04:45 (残り: 10時間15分)  420LAP 1位 
PIT STOP 09 回目(メインテナンス ピットストップ/10分間)(SC導入中)
ドライバー交代 菅波→菅波 タイヤ(ドライ)交換/給油/ブレーキパッド他 交換

05:50〜05:56  FCY導入

06:37 (残り: 8時間23分)  469LAP 1位 
PIT STOP 10 回目
ドライバー交代 菅波→内田 タイヤ(ドライ)交換/給油

08:12 (残り: 6時間48分)  518AP 1位 
PIT STOP 11 回目
ドライバー交代 内田→小河 タイヤ(ドライ)交換/給油

08:50 (残り: 6時間10分)  537LAP 1位 
PIT STOP 12 回目(SC導入中)
ドライバー交代 小河→小河 タイヤ(ドライ)交換/給油

09:05〜09:09  FCY導入
09:45〜09:48  FCY導入

09:44 (残り: 5時間16分)  562AP 1位
  PIT STOP 13 回目
ドライバー交代 小河→内田 タイヤ(ドライ)交換/給油

10:00〜10:04  FCY導入

11:22 (残り: 3時間38分) 610LAP 1位 
PIT STOP 14 回目
ドライバー交代 内田→菅波 タイヤ(ドライ)交換/給油

11:39〜11:42  FCY導入

13:04 (残り: 2時間56分) 662LAP 1位 
PIT STOP 15 回目
ドライバー交代 菅波→内田 タイヤ(3本)交換/給油

13:41 (残り: 1時間19分) 681LAP 1位 
PIT STOP 16回目 ドライバー交代 内田→菅波 タイヤ(フロント側 2本)交換/給油

チェッカー 5月23日(日) 15時03分35秒979
走行時間:24時間02分50秒979 LAP:724LAP
ST-Zクラス1位

内田優大……… 119LAP BEST:1分50秒167
山内英輝……… 183LAP BEST:1分49秒190
菅波冬悟……… 277LAP BEST:1分48秒940
小河 諒……… 145LAP BEST:1分49秒489