SUPER耐久 2020 レースレポート
開幕戦 3号車 ENDLESS AMG GT4 富士スピードウェイ
[予選/9月4日(金)] 3号車 4位
Aドライバー/内田 優大………4位 PM 12:20〜 15分間 ドライ
Bドライバー/山内 英輝………2位 PM 13:25〜 15分間 ドライ
Cドライバー/高橋 翼………3位 PM 14:10〜 15分間 ドライ
Dドライバー/山田 真之亮……3位 PM 14:40〜 15分間 ドライ
Eドライバー/富田 竜一郎……2位 PM 15:10〜 30分間 ドライ
予選レポート
新型コロナウイルス感染症。誰もが考えてもいなかったまさかの事態に追い込まれてしまった。3月に開幕戦と予定されていた鈴鹿ラウンド、第2戦のSUGOラウンド……。次々と開催延期となっていく。

発症当初は「富士24時間のころには落ち着くだろう」それが4月には「短縮するかもしれないけど、24時間はやるよ」そんな声があちこちから聞こえていた。しかし、現状は甘くなかった。第4戦のオートポリスまでの中止(開催延期)がアナウンスされることになった。

経済が止まってしまえば生きていけない。だからといって安易なレース開催は、クラスターにもなりかねない。いや、オーバーシュートの場になってしまう。

今の時点では、何が万全対策なのかわからない。

色々な意見はあるが、2020シーズンのスーパー耐久は、多くの制限がある中、富士スピードウェイで開幕された。

当チームは昨シーズンから新設され、初代チャンピオンに輝いたST-Z(GT4)クラスにAMGで挑む。チーム&ドライバー体制は基本的に大きく変わっていないが、開幕戦となった24時間レースでは、内田優大(Aドライバー/ジェントルマン)、山内英輝(Bドライバー/プラチナ)、高橋 翼(Cドライバー/エキスパート)のレギュラードライバーに加え、山田真之亮(ドライバー/エキスパート)&富田竜一郎(ドライバー/エキスパート)の二人が助人として加わる。昨シーズンも助人として加わっている山田は、SUPER GTのランボルギーニで高橋とコンビを組む息の合ったドライバー。さらに富田は2017シーズンのスーパー耐久 ST-1クラスでチャンピオンに輝き、SUPER GTではGT-Rやアウディのステアリングを握っている。2020シーズンにはベルギーの名門チームWRTから声がかかり、戦いの場をヨーロッパに移し、GTワールドチャレンジ・ヨーロッパに参戦。8月に開催されたスプリントカップでは、期待に応える走りで表彰台に上がっている。

完璧ともいえる布陣で挑んだ開幕戦。

昨シーズン、速さを見せていたKTMは、レギュレーションの変更などにより、昨シーズンほどの速さが見られない。その一方、新たに加わったBMW、アストンマーティンが速く、強力なライバルになりそうな気配がする。

予選ではもうひとつセットが決まらず、内田のタイムが伸びない。クラス4番手に沈む。 「100Rではリヤのグリップ感がなく、最終コーナーももうひとつ……」マシンから降りた内田は、次にアタックする山内、メカニックにマシンの状況を伝える。

セットを変更して山内がアタック。山内はトップタイムをマークしたBMWから0.166秒遅れの2番手につける。「内田さんから的確にマシンの状態を教えてもらえたのは大きい。メカニックもわずかしかない時間内でセットを変更してくれた」結果的に予選は4番手にとどまったが、ドライバー間はもちろんのこと、メカニックとの信頼関係がグッと縮まる瞬間でもあった。

最終的にトップのBMWから5番手につけたAMGまでのタイム差は、0.7秒足らず。決勝レースでは、白熱したバトルが予想される予選結果となった。
[決勝/9月5日(土)~6日(日)] 3号車 優勝

スタート  9月5日 14時59分52秒
チェッカー 9月6日 15時01分53秒363
路面コンディション  ドライ/ウェット
赤旗中断 9月5日 18時07分50秒〜22時30分(SCコントロールにより再開)
決勝レポート
FCY導入 計6回
 1回目 9月5日 16時31分〜16時38分(SC導入に移行)
 2回目 9月5日 17時40分〜17時49分(SC導入に移行)
 3回目 9月5日 18時03分〜18時03分(SC導入に移行)
 4回目 9月6日  1時44分〜 1時50分(SC導入に移行)
 5回目 9月6日  9時16分〜 9時17分
 6回目 9月6日 12時21分〜12時24分

SC導入 計10回 
 1回目 9月5日 16時38分〜17時08分
 2回目 9月5日 17時49分〜17時59分
 3回目 9月5日 18時03分〜18時07分
 4回目 9月5日 22時30分〜23時06分
 5回目 9月5日 23時21分〜23時54分
 6回目 9月6日  1時50分〜 2時38分
 7回目 9月6日  3時34分〜 4時07分
 8回目 9月6日  4時24分〜 5時13分
 9回目 9月6日  5時36分〜 5時52分
 10回目 9月6日  6時54分〜 7時29分


メカニック&ドライバーによるミーティングでは、細かな部分まで確認する。
24時間レース特有のレギュレーションでもある10分間のピットストップのほか、ジェントルマン/プラチナドライバーの各走行時間、夜間時に走行できるドライバー条件、FCY提示中のピットストップの禁止など、レギュレーション変更もあった。

スタート時間が刻々と迫る中、ドライバー&メカニックの頭の中から「天候」が離れない。 沖縄付近にまで迫ってきた台風10号は、戦後最大級で瞬間最大風速は70m以上とも……。雨が降り出せば、タイヤ交換のタイミングも大きく変わるし、ドライバーの乗り替わるタイミングも変わってくる。

9月4日、土曜日。スタート進行の真っただ中、厚い黒い雲がストレート上に迫ってくる。雨が落ち出す。にわかにメカニックの動きが慌ただしくなってくるが、この時の雨は、一瞬に止む。 午後3時前、セーフティーカーがピットロードに入り、スタートが切られる。

24時間先のチェッカーを目指して、一斉に加速。スタートドライバーの山内は、まずまずのスタートを切る。スタート直後から速さを見せたのがBMW。これを5ZIGENのAMG、アストンマーティン、当チームのAMGが追う展開となる。この3台による熱い2番手争いは、40分以上も続く。45分が過ぎ、雨が落ちだすが、大きく路面を濡らすほどではない。

しかし、その直後からレースは大きく動き出す。16時過ぎ、KTMがトラブルによるピットストップ。大きく遅れる。16時30分、大粒の雨が落ちだしたところで1回目のピットストップ。内田にスイッチ、レインタイヤを選択。その直後にFCYが提示され、そのままSCがコースに入る。内田はタイミングよくコースに戻りトップとなる。

ただ、ここから内田には試練が待ち受けていた。ウェット路面で飛び出すマシン、さらにはトラブルのマシンを横目に見ながらの走行。度重なるFCY&SC。しかし、我慢の走りを強いられる中でも内田は速い。クラストップを守り続けるばかりか、ライバル勢よりも速いタイムでのラップ。18時過ぎ赤旗によりレースはストップした。

マシンから降りることはできるが、いつどのタイミングでレース再開になるか分からないから、体を休めるための睡眠はとれない。

レースが再開したのは22時30分。内田の集中力は切れることなく、赤旗前の時と変わらない速さでリードを広げる。後方のマシンとの差を50秒以上にまで広げた23時22分過ぎ、ピットストップ、高橋にスイッチ。この時点で、内田は4時間23分の中断があったとはいえ、2時間20分近く、ステアリングを握っていたことになる。

SCがレースをコントロール中。高橋はストレートに戻ってきたSCの前でコースに戻ることができたため、2番手につけるBMWとの差を大きく広げることに成功。その後もFCY提示、SCコントロールがあったが、高橋以降の山田、富田も力強い走りで繋げていく。ピットストップのタイミングなどで、瞬間的にポジションを落とすことはあったが、危なげなくクラストップで走り続ける。夜明けごろには、完全に雨も上がり、路面も乾き、レインタイヤからドライタイヤに戻し、ラップタイムも上がりだす。

順調に流れていたENDLESSに最大のピンチが訪れたのは、チェッカーまで5時間を切った午前10時過ぎ、山田がステアリングを握っていた時だった。ラップタイムが大きく違うクラスのマシンをパスする際に接触してしまう。

これで2番手とのタイム差は20秒以上詰められてしまう。それでも助かったのは、緊急ピットするほどのダメージはなく、走り継げることができた点。審査委員会の裁定も黒白旗(ドライブスルーなどのペナルティはなく警告にとどまる)の提示だったことだ。

明け方に上がってから止んでいた雨が、12時過ぎ、突然、降り出す。

十分なリードもあるため、早めにレインタイヤに交換。ステアリングを握っている内田は、このときも神がかったドライビングを見せる。ライバルチームのプラチナドライバーよりも速いラップタイムで……。

最後は富田が締めくくる。雨が上がり、路面も乾きだしたところで内田から富田にスイッチ。富田は非凡な走りでラップを重ね、15時過ぎ、2番手のBMWに40秒以上のリードを保ってチェッカーを受ける。富士24時間レース、連覇の瞬間でもあった。

昨シーズンはライバルのトラブルから転がり込んできた勝利といってもよかった。しかし、今シーズンの勝利は違う。マシンの力を確実に引き出し、ちょっとしたミスがあっても、みんなでカバー。連覇となった今回の勝利は、間違いなく、スタッフ全員で引き寄せた心に残るレースだった。

走行時間:24時間02分01秒363 LAP:510LAP
ST-Zクラス1位(総合4位)

ギャラリー
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