WRC/世界ラリー選手権
2020年も「MスポーツWRT」へブレーキアイテムを供給!
新体制のフィンランド人コンビでラリー競技の最高峰シリーズに挑む
伝統の開幕戦「ラリー・モンテカルロ」で躍進。新加入のラッピが4位入賞!
概要/Outline
 国内外のレースシーンで活躍するエンドレスはラリーシーンでも活躍している。2005年および2007年のPWRC(プロダクションカー世界ラリー選手権)でチャンピオンに輝いた新井敏弘など数多くのユーザーをサポートするほか、ラリー競技の最高峰シリーズ、WRC(世界ラリー選手権)でも三菱、プジョーなどの数多くのワークスチームをバックアップ。さらに2009年からはフォードのワークスチーム「フォード・ワールドラリーチーム」(フォードWRT)にオフィシャルサプライヤーとしてブレーキアイテムを供給している。

 2012年を最後にフォードはワークス活動を休止するものの、エンドレスは引き続きテクニカルサプライヤーを務めてきた「Mスポーツ」の活動をサポート。新規定が導入された2017年にはエースのセバスチャン・オジェがドライバーズ部門で5連覇を果たすとともに、Mスポーツはマニュファクチャラーズ部門でもタイトルを獲得したことは記憶に新しい。

 2018年もその勢いは健在でオジェがドライバーズ部門で6連覇を達成。そのオジェが新天地を求めてチームを離脱したものの、Mスポーツが組織する「Mスポーツ・ワールドラリーチーム」(MスポーツWRT)は2019年以降もWRCへの参戦を継続しており、2020年も新体制でタイトル獲得にチャレンジしている。

 2017年よりMスポーツWRTに加入し、2019年の第8戦「ラリー・イタリア・サルディニア」で2位入賞を果たしたテーム・スンニネンがチームに残留したほか、2017年から2018年にトヨタGAZOOレーシングWRT、2019年はシトロエンWRTで活躍したエサペッカ・ラッピが加入するなどフィンランド出身の実力者たちをワークスメンバーとしてノミネート。サードドライバーは例年どおり、イベントごとにスペシャリストを起用する予定で、開幕戦のラリー・モンテカルロにはWRC2で活躍してきたイギリス出身の若手ドライバー、ガス・グリーンスミスを起用するなどフレッシュな顔ぶれだ。

 同チームの主力モデル「フォード・フィエスタWRC」は目立ったアップデートこそ行われていないが、もともとハンドリング性能の高いマシンで、2020年よりチームに加わったラッピも「シャーシのバランス性能が高いのでコントロールがしやすい」と語る。

 残念ながら開幕戦のラリー・モンテカルロではSS2でスンニネンがミッショントラブルに祟られてデイリタイアを強いられたほか、SS1ではスンニネンに加えて、ラッピ、グリーンスミスのマシンにオーバーヒートが発生したことで大きくタイムロス。その結果、MスポーツWRTはトップ争いから脱落することとなったが、それでもラッピが4位入賞を果たしたほか、スンニネンが8位でポイントを獲得したことは称賛に値する。

 第5戦のラリー・ポルトガルにはエンジンのアップデートが予定されるなどマシンの進化が期待されるほか、11月19日-22日は愛知県および岐阜県を舞台に最終戦として「ラリージャパン」が開催されるだけに、2020年のWRCでもエンドレスがサポートするMスポーツWRTに注目したい。
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チーム体制
 モンテカルロ、サファリなどのクラシックラリーで数多くの勝利を獲得するほか、1973年にWRCが発足してからも常に最前線でトップ争いを展開するなどラリーの名門として活躍するフォード。その活動を担っているのが、イギリスの名門コンストラクター、Mスポーツだ。

 1997年よりフォードのテクニカルサプライヤーとしてマシン開発およびラリーオペレーションを担当しており、2006年および2007年にはマニュファクチャラーズ部門でタイトルを獲得。2012年にフォードがワークス活動を休止してからもMスポーツはフォードの有力チームとして活動しており、2017年にはフォルクスワーゲンから移籍したセバスチャン・オジェがドライバーズ部門で5連覇を達成したほか、Mスポーツはマニュファクチャラーズ部門でもタイトルを獲得するなど二冠を達成した。

 その後も2018年にオジェがドライバーズ部門で6連覇を達成するなどMスポーツはWRCの最前線で活躍。2020年は参戦4年目のテーム・スンニネンに加えて、トヨタやシトロエンで活躍したエサペッカ・ラッピが新たに加入するなど、ドライバーズラインナップを強化している。

マシン・プロフィール フォード・フィエスタWRC
 2017年のレギュレーション変更に合わせてMスポーツWRTが投入したフォード・フィエスタWRCは、ラリーエンジニア、クリス・ウィリアムズが開発を担当。文字どおり、フィエスタをベースに2015年のシーズン中盤から開発を続けてきたマシンだ。同モデルの特徴は大胆なエアロダイナミクスで、攻撃的なフォルムを採用することにより抜群のダウンフォースを獲得している。

 エンジンも吸気リストリクター系の拡大でパワーアップが図られるほか、アクティブセンターデフの採用でコーナリング性能が向上したことも同モデルの特徴と言っていい。これに合わせて足回りも一新されるほか、ブレーキシステムも冷却用ダクトが設置されるなど細部まで強化されたこともポイントだ。

 フォード・フィエスタWRCは歴代WRカーと同様にバランスに優れたマシンに仕上がっており、2020年に合わせてMスポーツWRTに加入したエサペッカ・ラッピも「シャーシバランスに優れたマシンでコントロールしやすい」と高く評価。2019年にチーム代表に就任したリチャード・ミルナーは「開幕戦の時点ではサスペンションのセットアップ程度で目立ったアップデートは行えていないが、再びヨーロッパに戻ってくる第5戦のポルトガルにはエンジンの改良を行いたい」と語っているだけに、フィエスタWRCはMスポーツWRTにとって躍進の原動力となるに違いない。

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ドライバー・プロフィール 3号車 テーム・スンニネン/No.3 Teemu Suninen
1994年2月1日生まれ、フィンランド出身。TMGのジュニアドライバー育成プログラムにより2014年のラリー・フィンランドでWRCにデビュー。2015年にはオレカチームのドライバーとしてWRC2およびWRC3に参戦した。2016年はWRC2で活躍しており、2017年にはMスポーツのフォード・フィエスタWRCを武器に最高峰クラスへスポット参戦。2018年には第6戦「ラリー・ポルトガル」では3位入賞を果たし、初の表彰台を獲得した。その実績が高く評価されたことで、2019年にはMスポーツWRTのセカンドドライバーに抜擢され、第8戦のラリー・イタリア・サルディニアで2位入賞。今後の躍進が期待されている。
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ドライバー・プロフィール 4号車 エサペッカ・ラッピ/ No.4 Esapekka Lappi
 1991年1月17日生まれ、フィンランド出身。2012年にフィンランド選手権でチャンピオンに輝き、2013年はシュコダのワークスドライバーとしてAPRCに参戦。2014年にERCでチャンピオンを獲得すると2016年にはWRC2でチャンピオンに輝いた。2017年にトヨタGAZOOレーシングに加入すると、スポット参戦ながらヤリスWRCで躍進し、第9戦のラリー・フィンランドで待望の初優勝を獲得。参戦2年目の2018年は未勝利ながら3度の表彰台を獲得しており、安定性の高さを証明した。2019年は新天地を求めてシトロエンに移籍。マシンのパフォーマンス不足は否めず苦戦を強いられたが、3回に渡って2位入賞を果たすなどその実力をアピールした。  
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ドライバー・プロフィール44号車 ガス・グリーンスミス/No.44 Gus Greensmith
 1996年12月26日生まれ、イギリス出身。2013年にラリー競技を始め、2014年にはイギリス・フィエスタ・スポーツトロフィーに参戦。2016年にはフィエスタR2を武器にDマックトロフィーのドライバーとして計6回のWRCに参戦したほか、2017年からはフィエスタR5でWRC2に参戦を開始し、2018年には計4回のポディウムフィニッシュでランキング4位につけた。2019年にはWRC2プロに参戦し、ランキング3位を獲得したほか、フィエスタWRCでスポット参戦。2020年も開幕戦のラリー・モンテカルロのほか、数戦にフィエスタWRCでスポット参戦する予定で、今後の成長が期待されている。  
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2020年のWRC Future of WRC 2020
 2020年のWRCはシトロエンが活動を休止したものの、トヨタとヒュンダイ、そして、フォードのサテライトチームとして活動するMスポーツWRTが参戦を継続。三つ巴の構図となり、例年以上に激しいバトルが予想されているが、そのなかで最も注目したいチームが、やはりエンドレスがオフィシャルサプライヤーとしてブレーキパッドを供給しているMスポーツWRTだと言えるだろう。

 2019年は目立った成績を果たせなかったが、第8戦のラリー・イタリア・サルディニアで2位入賞を果たしたテーム・スンニネンがチームに残留したほか、トヨタを経て、シトロエンで活躍したエサペッカ・ラッピが新加入を果たすなど2020年に合わせて体制を強化。さらに主力モデルのフォード・フィエスタWRCもサスペンションのセットアップで熟成を極めるなど、ソフトおよびハードの改良が実施されるなか、2020年のキックオフを迎えたが、伝統の開幕戦「ラリー・モンテカルロ」は雪と氷が点在する特殊ターマック戦で、MスポーツWRTは予想以上の苦戦を強いられることとなった。

 まず、1月23日(木)の夜にオープニングステージとして行われたSS1で、ラッピ、スンニネン、ガス・グリーンスミスの3台のフォード・フィエスタWRCに予想外のハプニングが発生。ラジエータが落ち葉で詰まったことにより、オーバーヒート症状が発生したことでスンニネンが7番手タイム、ラッピが8番手、グリーンスミスが10番手に出遅れるほか、続くSS2ではスンニネンがミッショントラブルによりデイリタイアを決断するなど厳しい立ち上がりを強いられた。

 24日(金)のデイ2ではオープニングステージとなるSS3でグリーンスミスがコースアウトでそのままデイリタイアを喫するものの、ラッピとスンニネンは安定した走りを披露。デイ1を6番手で終えていたラッピが5番手に浮上したほか、再出走を果たしたスンニネンも16番手まで浮上する粘りの追走を披露した。

 25日(土)のデイ3でもラッピが5番手につけるほか、スンニネンが11番手まで浮上するなど安定した走りを披露。26日(日)のデイ4でも激しい追走を披露したラッピが4位に浮上したほか、再出走組のスンニネンも8位に入賞を果たすなど、MスポーツWRTは波乱含みの幕開けとなった第1戦、ラリー・モンテカルロでダブルポディウムフィニッシュを達成するとともに250戦連続でポイント獲得を達成した。

 この開幕戦の動向について「モンテカルロでの自己ベストだし、いろんなことを学ぶことができたので満足している。ポジティブな形でシーズンを始めることができた」とラッピ、「自分のペースには満足できたし、スプリットタイムも悪くなかった」とスンニネンともに好感触。さらにチーム代表のリチャード・ミルナーも「第5戦のポルトガルにはエンジンの改良を行いたい」と語っているだけにマシンの進化も期待できるだろう。11月19日-22日には愛知県および岐阜県を舞台にシリーズ最終戦「ラリー・ジャパン」が開催されるだけに、2020年のWRCでもエンドレスがオフィシャルサプライヤーとしてサポートするMスポーツWRTに注目したいものだ。

ギャラリー
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