SUPER耐久 2019 レースレポート
第4戦 3号車 オートポリス
[予選/7月20日(土)] 3号車 1位
Aドライバー/内田優大…………… 1位 PM 1:45〜 15分間 ドライ
Bドライバー/山内英輝…………… 1位 PM 2:45〜 15分間 ドライ
Cドライバー/高橋 翼…………… 1位 PM 3:25〜 20分間 ウェット
予選レポート
 N1耐久と呼ばれた時代まで遡ると30年の歴史があるスーパー耐久。スタート当初からレースにかかわってきた当社は、いろいろなシーンを見てきた。シーズン中、一度も勝ったことがないのに最終的にシリーズチャンピオンになったチーム。4勝もしたにもかかわらず、チャンピオンになれなかったチームもあった。時には70台以上がエントリーし、予選を戦い決勝レースに進めず土曜日にサーキットを後にする。「エッ……!?」というようなドラマが起きるのがスーパー耐久である。

 今シーズン、当チームはFIA GT4マシンによって争われるST-ZクラスにAMG GT4(メルセデス ベンツ)で参戦。ライバル筆頭のKTMのトラブルにも助けられ、当チームは開幕3連勝。今回のオートポリスで当チームが優勝すると、その時点でチャンピオンが確定する重要なレースとなった。ただ、上記で紹介したように何が起きるかわからないのがスーパー耐久だ。ドライバーはもちろんのことメカニックも気を引き締めて乗り込んだ九州だったが、あっけなく決着はついてしまった。

 金曜日の公開練習。富士ラウンドの時以上にKTMが速さを見せた。当チームのプラチナドライバーの山内が必死になって攻めてもKTMに追いつかない。その差は1秒半。コース上での勝負では勝てないかもしれない。これまで以上にピットストップのタイミングや作業時間の短縮などチーム力で挑まないと負けてしまう。さらに復活したジネッタも侮れない。予想していた以上に速い。ところが……金曜日の公開練習で2台ともクラッシュ。とくにKTMはほぼ全損に近いクラッシュに見舞われてしまい、KTMは第4戦をキャンセル。この時点で残り2戦(もてぎ、岡山)でKTMが獲得できる最大ポイントは54ポイント。すでに当チームと57.5ポイント差があるため、KTMのチャンピオンは消滅。ランキング3番手につけている51号車も不参加。ランキング4番手の190号車とは80ポイント差。当チームが6ポイント以上、獲得できればその時点でチャンピオンが決まる。つまり、決勝レースは2台のみしか走らないため、完走=チャンピオンと言うわけだ。当チームが圧倒的に有利なことに間違いないが、ここまでくると見えないプレッシャーがかかる。どんなに無理をせず、気を付けて走っていても突っ込まれる可能性はある。実際、当チームは過去にそんな苦い経験をしている。

 そんな状況の中でも内田、山内はともにベストタイムを出し、今季2回目のポールポジションを決める。ちなみに山内がマークした1分58秒292はコースレコード。一方、Cドライバー登録の高橋は、金曜日の公開練習から、ウェットコンディションでの走行が続く。ここまで高橋の走行の時だけウェットが続くと、ピット内では「つばさはミスター雨男だね」という声も……。

[決勝/7月21日(日)] 3号車 2位
AM 11:34 スタート 5時間レース ウェット/ドライコンディション
(PM 4:20赤旗が提示され、そのままレース終了となる)
決勝レポート
 5時間という長丁場の決勝レース。ライバルがいないだけに時間の流れが遅く感じる。
スタートは高橋。雨は止み、各コーナーにかかっていた雲も消え、視界は良好だが、路面はウェットなため、ウエットタイヤでスタートする。無理をせず、自分のペースで走りたいのだが、後方からスタートするST-TCRクラスのマシンとのラップタイム差はほとんどない。前に行かせるのもひとつの手だが、このクラスは10台近くが走っている。完全に前をふさがれてしまう可能性もある。バトルとは違った緊張感をもって走る高橋。10ラップ過ぎにはレコードラインが乾きだす。ウェット用タイヤでは厳しくなりだしたため、17ラップ目、高橋から内田にスイッチ。ドライ用タイヤに交換して送り出す。その直後にこの日、最初のFCY導入。これがバトル中だったら、勝敗を左右するタイムロスにもつながりかねない。しかも、その直後に雨が落ちだす。安全を最優先すれば、再度、ウェット用タイヤに戻す手もあるが、ここは内田に我慢してもらう。この策が功を奏す。

 26ラップ目に2回目のFCY導入。5分強のFCYだったため、路面は回復、レース再開時はかなり乾いていた。数ラップ後には2分2秒台とタイムもアップ。190号車とは2ラップ以上の差がついている。

 54ラップ過ぎ、内田から山内にスイッチ。チェッカーまで2時間30分、折り返し点を過ぎたところで3回目のFCY導入。この日のライバル、190号車との差は大きく、リスクのある行動は必要がないため、山内は淡々とラップを重ねていく。94ラップ過ぎ、3回目のピットストップ。再び、高橋がステアリングを握る。あとはチェッカーを目指して、無理をせず走るだけだ。しかし、103ラップ過ぎ、警告灯が点灯。大きな雨粒が落ちだしてきた。ピットストップの指示を出す。オルターネーターのベルトが切れていることが判明。メーカーの指定する交換時期には達していないが、スペアパーツとして持ってきている。すぐに交換作業に入る。

 このタイミングで落ちだした雨は、次第に強くなる。15時40分、FCY導入。原因となったマシンは排除されるが、強い雨が続いているため、セーフティカーが入り、レースがコントロールされる。この状況は当チームのとっては願ってもない状況だったが、10ラップ以上あったリードは消え、高橋がコースに戻った時には、トップの190号車から5ラップ遅れだった。その後、天候の回復が見込めないため赤旗が提示され、そのままレース終了となった。結果的にチェッカーを受けることができ、義務周回数もクリアしているため、2位確定。この時点でチャンピオンも決定した。 でも、作業が10分ほど遅れたら……。チェッカーが受けられない。イコール完走扱いにならず、ノーポイント。チャンピオン争いはもてぎラウンドに持ち越される。圧倒的に有利でも、ほんのちょっとしたことでツキが逃げ、なにをやってもうまくいかなる……ことがある。

 3人のドライバーは、口にこそ出さなかったが「ライバルとのバトルに打ち勝ってチャンピオンを決めたかった」というのが本音だったに違いない。一方、メカニックも「早々にライバルがいなくなっているのだから、開幕4連勝、気持ちよくチャンピオンを決めてもらいたかったのに、トラブルが出てしまい……」と話している。

 しかし、チャンピオンに輝いたのは間違いない事実。残り2戦、サーキットに駆けつけてくれるエンドレスファンに、チャンピオンらしい最高の走りを見せることを約束しますので楽しみにしてください。それができた時、ドライバーはもちろんのことメカニックは、チャンピオンになった喜びを心から味わいます。

ギャラリー
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