サポートレース「2017年のWRC@前半戦総括」
開幕戦のモナコ、第6戦のポルトガルを制覇!
5連覇を狙うオジェが前半戦でドライバーズ部門をリード
タナクが第7戦のイタリアで初優勝を獲得、エバンスもアルゼンチン、フィンランドで2位に入り、Mスポーツがマニュファクチャラー部門でも首位を快走!
概要 Outline
 国内外のレースシーンで活躍するエンドレスはラリーシーンでも活躍している。2005年および2007年のPWRC(プロダクションカー世界ラリー選手権)でチャンピオンに輝いた新井敏弘など数多くのユーザーをサポートするほか、ラリー競技の最高峰シリーズ、WRC(世界ラリー選手権)でも三菱、プジョーなどの数多くのワークスチームをバックアップ。さらに2009年からはフォードのワークスチーム「フォード・ワールドラリーチーム」(フォードWRT)にオフィシャルサプライヤーとしてブレーキアイテムを供給している。  2012年を最後にフォードはワークス活動を休止するものの、エンドレスは引き続きテクニカルサプライヤーを務めてきた「Mスポーツ」の活動をサポート。その活動はテクニカルレギュレーションが一新された2017年も健在で、Mスポーツは新規定モデルを武器に最前線で活躍している。

 フォードの有力チームとして活動するMスポーツはマニュファクチャラーとして「Mスポーツ・ワールドラリーチーム」(MスポーツWRT)を組織し、3台の最新モデルを投入。エースドライバーを務めるのはフォルクスワーゲンのワークスドライバーとして2016年のWRCで4連覇を果たしたセバスチャン・オジェで、DMACKのドライバーとして2016年のWRCに参戦していた若手のオット・タナクがセカンドドライバーを担当。3人目のノミネートも、チームとなじみ深いエルフィン・エバンスをそろえ、豊富な実績を持つディフェンディングチャンピオンと成長株の若手の組み合わせで、Mスポーツとしては理想的な体制と言えるだろう。

 気になるマシンは新規定に合わせて開発された「フォード・フィエスタWRC」で、空力性能の高いエアロダイナミクスを採用。さらにエンジンの吸気リストリクター系が拡大されたほか、アクティブセンターデフの採用されたことも2017年型モデルの特徴と言えるだろう。

 当然ながらマシンのパフォーマンスが飛躍的に向上したことから、サスペンションはもちろんのこと、冷却用のエアダクトを設けるなど、ブレーキシステムも一新。2017年型モデルは旧型のフィエスタWRCと同様にトータルバランスに優れたマシンで、あらゆるステージに対応可能だ。

 事実、MスポーツWRTの3台のフィエスタは2017年のWRCで躍進している。エースのオジェが開幕戦のラリー・モンテカルロ、第6戦のラリー・ポルトガルを制するほか、計6戦で表彰台を獲得するなど安定した走りを披露し、ドライバーズ部門の首位で前半戦を消化。さらにタナクも第7戦のラリー・イタリア・サルディニアで待望の自身初優勝を獲得したことも2017年の前半戦を語る時に欠かせないエピソードと言えるだろう。

 残念ながら約4週間のサマーブレイクを経て行われた第9戦のラリー・フィンランドでは、オジェがコースアウトでリタイア、タナクも6位に終わることとなったが、エバンスのアルゼンチンに続く2位獲得もあり、Mスポーツはマニュファクチャラーズ部門でも首位をキープするなど、タイトル奪還に向けて順調な戦いを見せている。

チーム体制 Team
 モンテカルロ、サファリなどのクラシックラリーで数多くの勝利を獲得するほか、1973年にWRCが発足してからも常に最前線でトップ争いを展開するなど、ラリーの名門として活躍してきたフォードが2012年でワークス活動を休止した。まさにラリーファンにとっては残念なニュースとなったが、1997年よりフォードのテクニカルサプライヤーとしてマシン開発およびラリーオペレーションを担ってきたMスポーツがフォードの有力チームとして参戦を継続。レギュレーションが一新された2017年もマニュファクチャラーのMスポーツWRTとして参戦中だ。

 マルコム・ウィルソンが率いるMスポーツはチーム力においてNo.1の実力を持っており、2006年および2007年にはフォードのマニュファクチャラーズ部門の2連覇を演出している。さらにドライバーおよびエンジニアの育成にも力を注いでおり、これまでに数多くの逸材を輩出。2017年はフォルクスワーゲンのエースとしてドライバーズ部門で4連覇を果たしたセバスチャン・オジェをエースとして起用するほか、昨年までDMACKのドライバーとして活躍していた若手のスプリンター、オット・タナクをセカンドドライバーに抜擢。3人目のノミネートにはチームともなじみ深いエルフィン・エバンスを起用し、MスポーツWRTは2017年もタイトル争いを展開している。
マシン・プロフィール フォード・フィエスタWRC
 2017年のレギュレーション変更に合わせてMスポーツWRTが投入した新型WRカーで、ラリーエンジニア、クリス・ウィリアムズが開発を担当。文字どおり、フィエスタをベースに2015年のシーズン中盤から開発を続けてきたマシンだ。同モデルの特徴は大胆なエアロダイナミクスで、レギュレーションに合わせて空力パーツを刷新。「ダウンフォースは今までのWRカーとはまったく違うレベル。ドライビングも少しアジャストしている」とタナクが語るように攻撃的なフォルムによって抜群のダウンフォースを獲得した。

 エンジンも吸気リストリクター系の拡大でパワーアップが図られるほか、アクティブセンターデフの採用でコーナリング性能が向上したことも2017年型モデルの特徴と言っていい。これに合わせて足回りも一新されるほか、ブレーキシステムも冷却用ダクトが設置されるなど細部まで強化されたこともポイントだ。

 フォード・フィエスタWRCは歴代WRカーと同様にバランスに優れたマシンで、エースのオジェが開幕戦のラリー・モンテカルロ、第6戦のラリー・ポルトガルを制するほか、若手のタナクが第7戦のラリー・イタリア・サルディニアを制するなど前半戦だけで計3勝をマーク。今後もセットアップを含めて、マシンの熟成が期待されているだけに、フィエスタWRCは進化を続けていくに違いない。
ドライバー・プロフィール:1号車 セバスチャン・オジェ/No.1 Sebastien Ogier
1983年12月17日生まれ、フランス出身。22歳でラリー競技にデビューし、2008年にはシトロエンのワークドライバーとしてJWRC(ジュニア世界ラリー選手権)に参戦。2011年にはシトロエンのワークスチームでWRCに参戦するものの、2012年にはフォルクスワーゲンへ移籍し、チームのオペレーションテストを目的にシュコダS2000でWRCに参戦した。2013年にフォルクスワーゲンが正式参戦を果たすと、オジェはポロWRCを武器に猛威を発揮。ドライバーズタイトルを獲得するほか、その後もWRCを支配し、2016年にはドライバーズ部門で4連覇を達成するとともにフォルクスワーゲンのマニュファクチャーズ部門の4連覇に貢献した。フォルクスワーゲンの撤退に伴い、2017年はエースとしてMスポーツへ移籍。自身の5連覇とともにMスポーツのマニュファクチャラーズタイトル奪還が期待されている。

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ドライバー・プロフィール:2号車 オット・タナク/ No.2 Ott Tanak
 1987年10月15日生まれ、エストニア出身。2008年から2009年にかけてエストニア選手権で活躍し、2010年にはピレリスタードライバーの一員としてPWRC(プロダクションカー世界ラリー選手権)に参戦。2011年から2012年にはSWRC(スーパー2000世界ラリー選手権)で活躍している。2013年はエストニア選手権に活動の場を移すものの、2014年にはDMACKのドライバーとしてWRC2に参戦し、2015年にはMスポーツのワークスチームでWRCに参戦。2016年はDMACKのドライバーとしてWRCに参戦しており、第8戦のラリー・ポーランドでは2位入賞を果たした。その実績が高く評価され、2017年はMスポーツのワークスチームに復帰。スプリント能力は抜群で、次世代のスピードスターとして今後の成長が注目されている。

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2017年のWRC Future of WRC 2017
2013年から2016年にかけてドライバーズ部門およびマニュファクチャラーズ部門で4連覇を果たしたフォルクスワーゲンが撤退するものの、トヨタが18年ぶりに復帰参戦を果たすなど、マニュファクチャラーの入れ替わるほか、レギュレーションの変更に合わせて各チームともに新規定のニューモデルを投入。まさに2017年のWRCは新時代の幕開けで、新たな勢力争いが予想されているが、そのなかでタイトル争いを左右するチームがフォードの有力チーム、MスポーツWRTにほかならない。

 2017年は4連覇を果たしたセバスチャン・オジェ、若手スプリンターのオット・タナクという理想的なドライバーラインナップで、バランス性に優れた2017年型のニューモデル、フォード・フィエスタWRCを武器にシーズン序盤から素晴らしいパフォーマンスを披露している。

 まず、エースのオジェが開幕戦のラリー・モンテカルロで今季初優勝を獲得するほか、第2戦のラリー・スウェーデンで3位、第3戦のラリー・メキシコで2位、第4戦のツール・ド・コルスで2位につけるなど安定した走りで表彰台を獲得。さらに第6戦のラリー・ポルトガルでは今季2勝目を獲得したほか、第8戦のラリー・ポーランドで3位につけるなど、取りこぼしのない戦い方を披露した結果、オジェはポイント争いにおいてもドライバーズ部門の首位で前半戦を折り返している。

 一方、チームメイトのタナクも開幕戦のラリー・モンテカルロで3位、第2戦のラリー・スウェーデンで2位、第5戦のラリー・アルゼンチーナで3位につけるなど表彰台を獲得。さらに第7戦のラリー・イタリア・サルディニアでは待望の自身初優勝を獲得したことは記憶に新しい。

「いくつかマシントラブルが出てしまってトップ争いのチャンスを失ったことは残念に思う。それでもオジェが期待どおりのパフォーマンスを見せてくれているおかげで、オジェがドライバーズ部門で首位をキープ(注:第8戦のラリー・ポーランド終了時点)するほか、マニュファクチャラーズ部門でも首位につけている」と語るのはチーム代表のマルコム・ウィルソンだが、その言葉どおり、エンドレスのブレーキパッドを装着したフィエスタWRCを武器にオジェとタナクが躍進した結果、MスポーツWRTがマニュファクチャラーズ部門でタイトル争いを支配。残念ながら第9戦のラリー・フィンランドはオジェがコースアウトでリタイアしたほか、タナクも6位にとどまるものの、エバンスが2位に入り、「ターゲッドはあくまでもオジェの5連覇とマニュファクチャラーズタイトルの奪還だ。残りのラリーでも確実にポイントを獲得していきたい」とマルコムも語っているだけに、シリーズ終盤戦においてもエンドレスがサポートするMスポーツWRTの動向に注目したい。
インタビュー INTERVIEW
MスポーツWRT/No.1 ドライバー
セバスチャン・オジェ/Sebastien Ogier
「エンドレスのブレーキパッドはタッチのフィーリングがとてもいい。それにコントロールがしやすいから、多くのドライバーが好感触を感じることができると思う。エンドレスはフォルクスワーゲンも使用していたけれど、ポロWRCのキャリパーはアルコンのシステムで、Mスポーツのフォード・フィエスタはブレンボのブレーキシステムとサプライヤーが異なるけれど、エンドレスのブレーキパッドはいずれも安定している。ラリー競技においては、とてもいいブレーキパッドだと思うよ」

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インタビュー INTERVIEW
MスポーツWRT/チーム代表
マルコム・ウィルソン/Malcom Wilson
「テストプログラムで使ってみたことがエンドレスを使用したきっかけだった。当時のマシンはフォーカスWRCだったけれど、マシンとの相性も良かったし、何よりもパーツのパフォーマンスや開発のレスポンスも良かったので2009年よりオフィシャルサプライヤーとしてエンドレスを採用した。それはフィエスタWRCになっても変わらなかったし、2017年モデルにおいてもテストをした結果、ドライバーからの評価も高かったのでエンドレスを採用した。エンドレスはラリーシーンにおいて豊富な実績を持つブレーキメーカーだと思う」

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ギャラリー
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